グレート物置91

がんばって書いたのはこちらに置いとく →がんばってなくても置く事にした

ミラクル博士 '91

元記事:

http://q.hatena.ne.jp/1336480257

 

※条件

・1人称のままとする

・ストーリーは改変しない

 

題「ミラクル博士参上」

 

「大人しく……そのニボシを渡しな」

 

――ぼくは猫のノーマル。

 飼い主が亡くなってからというもの、ずっと孤独な野良猫暮らしだ。

 当然ながら、自分のエサは自分で探すしかない。

 どうやら、運悪く不良猫集団の縄張りに紛れ込んでしまったらしい。

 

 不良猫達の様相ときたら、今時ポマードテカテカでリーゼントやオールバックにセットした髪にいかつい目付き。

 時代錯誤ないで立ちに内心失笑しながらも、ぼくは自分の身に降りかかった火の粉をどう払うのか決断を迫られていた。

 

「あ?聞こえてんのか?ん?」 

 不良猫のリーダ格らしき一匹が、イラついた様子でぼくを威嚇する。

 こいつの目つきの悪さは他の不良猫の追随を許さない。

 

「……やっ、やだよ」

「んだとてめえ!」

ぼくがやっとのことで搾り出した返事が、不良猫を逆上させた。

 

「マサ!やっちまえ!」

周りの猫共もヒートアップしてけしかけてくる。

 

「どうやら痛い目に遭いたいようだなー」

マサ、と呼ばれたその猫は尻尾を逆立て、恐怖に凍りついたぼくに襲いかかった!

……と思ったその瞬間、マサの前足を誰かがはたき落とした。

 

「やめたまえ」

 

ぼくが恐る恐る顔を上げると、そこには、七三分けの髪で牛乳瓶の底のようなメガネをした、それでいてやたらと毛並みの良い猫の姿があった。

――うわー、また変なのでてきたー

ぼくは助かった、と思う反面、そのあやしい様相の猫に驚きを隠せなかった。

 

「んだコラァ、ナメてんのかコラ、えぇ博士ちゃんよ~?」

博士と呼ばれたその猫は、どうやら不良猫共と顔見知りらしい。

博士は不良猫共の恫喝を一蹴し、不敵な一言を放った。

「ここで会ったが百年目、君達にはとっておきをお見舞いしてあげよう」

 

「ほぉー、どーすんの?」

いきり立つ不良猫共を前に、博士はマサを一瞥すると、独り言のようにつぶやいた。

 

「マサ、君はいつも2丁目のタバコ屋のお婆さんとこに入り浸っているね?」

「!?」

「おおかたエサとかマタタビとかに釣られてるんだろう?」

「そ、それがどうした? ね、猫がマタタビ吸って悪いんか!」

「……そして君は猫ナデ声でこう呼ばれている……『まーくん』」

 

凍りつく世界。……そして時は動き出す。

 

「なっ、なななななななぜそれを?」

「ま、まーくん……ぷぷっ」

取り巻きの不良猫から思わず失笑が漏れる。

「おいコラ!今笑ったやつ誰だ!……くそっ、覚えてろ!」

 

不良猫共が足早に立ち去った後も、しばらくポカンと口を開けていたままのぼくに、博士は微笑んだ。

「もう大丈夫。私は、ミラクル。君は?」

「の、ノーマル。あっ、ありがとう。……でもあいつら『博士』って」

「ああ、あういう低脳共は人の名前を覚える能力もないからね。

いつものことなんだ、つまらない面子が何よりも大事らしい。」

 

「……でもなんで『博士』なの?」

「私はこの町のことなら何でも知っているからね」

不敵に笑うミラクル、いやミラクル博士であった。